カメムシ



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カメムシの生態と対策

カメムシとは?

カメムシは、カメムシ目カメムシ亜目のカメムシ科の昆虫の総称です。あくまで総称ですので「カメムシ」という昆虫は存在しません。

カメムシは、日本に数多く生息する昆虫の中でも比較的よく見かける機会があり、その体から放たれる悪臭もあってか、かなり知名度が高い昆虫であると言えるでしょう。地域によってはクサムシ、ヘコキムシ、ヘクサムシなどと呼ばれることもあります。どの地域でも臭いを由来にした名前がつけられている事を見ても、その臭いのインパクトの強さが伺えますね(笑)

しかし一言でカメムシと言ってもその種類は多岐にわたり、形状も生態も様々です。クサギカメムシは茶色の五角形の体格をしていて主に果実や茎の液を摂取しますし、クチブトカメムシはアゴをイモムシに刺し込んで捕食しますし、なんと同じ仲間のサシガメの中には哺乳類について吸血するものまで存在します。吸血性のカメムシなんて想像したくもないですね(汗)

 

いろんなカメムシの種類

↑見た目からかなりの違いがある様々なカメムシたちの写真

 

さて、全てのカメムシの種類の生態を解説していてはキリがないので、ここからは、日本でもっともポピュラーで、しかも屋内に侵入してきてみんなを困らせるカメムシ、クサギカメムシについて解説していくことにします。以下、この頁ではカメムシという記述は全てクサギカメムシのことを指します。

 

網戸につくカメムシと葉っぱの上にいるカメムシ
↑日本全国、特に山間部に多く生息するクサギカメムシ

 

カメムシの身体的特徴

カメムシはその名前のとおり甲羅をしょった亀のようなビジュアルをしています。体長は13mm~20mm程度で、ほかのカメムシの仲間の中でもかなり大きい部類に入ります。

体色は基本的には暗褐色の不規則なまだら模様をしていて、個体によっては少し黄色っぽかったり、茶色寄りだったりすることもあります。この差は環境によって表れるようで、その住みかに合わせた保護色に近い色をしている場合が多いようです。また意外に平べったい体をしていて、細い隙間に潜り込むのに適した形状をしています。樹木の隙間や石の下、人家の壁材の隙間、窓のさんの隙間、どこにでも潜り込むことができるため、人家に侵入して我々の前にその姿を現すことは日常茶飯事。困ったもんです。

甲羅のような背中の中には大きな羽根が収納されており、遠距離の移動の際にはそれなりの速さで飛行することが可能です。ただし旋回性能や対物レーダー機能はそれほど高くないようで、勢いよく何かの障害物にぶつかる姿をよく見かけます。しかしブーンと大きな羽音を立ててこちらに飛んできたときの、あの恐怖感はたまりませんね。

 

カメムシの羽
↑カメムシの羽

 

そして誰もが知っているカメムシの悪臭。
普段は臭いを放つことはありませんが、ひとたび外敵から刺激を受けると胸の穴から液を分泌して悪臭を放ちます。このキュウリの腐ったような臭いはかなり強烈で、6畳間ならその部屋にいられないぐらいに臭くなります。

バラエティ番組の特集では「カメムシは自分の臭いで死ぬ」というネタが放送されて話題になりましたね。密閉した瓶の中でカメムシに悪臭を出させると、その瓶の中でカメムシは自らの臭いで死んでしまいました(笑)それぐらいに強悪な臭いです。

また、このカメムシの匂い成分はパクチーの成分と非常に近いということも伝えられ、SNSなどではパクチー好き達が「ショック過ぎる」と嘆きの声を上げました(笑)

 

カメムシの死骸

↑カメムシを横から見た姿(左)と、ひっくり返って死んでいるカメムシ(右)

 

カメムシの主食と天敵

カメムシは植食性で、成虫はありとあらゆる植物の果実、茎・葉の汁を好んで摂取します。(※ただし幼虫は果実はあまり好まないようですが)口元に普段は折りたたんであるストローのような器官を持っており、これを伸ばして対象に刺し込むことで果汁や樹液を吸い出します。

このため農家にとってはカメムシの食害はかなり深刻で、
特にみかん、梅、柿、梨、りんご、桃、さくらんぼ、びわを扱う業者にとっては大きな脅威になっています。カメムシに憑かれてしまった果実はその果汁を吸われてしまい、成長が阻害されてしまいます。形がいびつになり商品価値が下がってしまったり、ひどい場合は腐って廃棄処分となってしまうことも。

カメムシ

↑葉の茎部分にストローを指して液をすするカメムシ

 

逆にカメムシの天敵ですが、成虫については実はほとんど自然界には存在しません。いかにその強烈な臭いが身を守ることに適しているかを、このことが証明していますね。ただしクモやカマキリ、サシガメなどは、カメムシの種類やそのときの空腹度によっては襲うことはあるようです。

また多くの昆虫にとっての天敵になるアリですが、このアリでさえこの臭いには近寄ることはありません。なんとアリの警戒フェロモンと同じ成分がカメムシの臭いには含まれているのです。カメムシってもしかしてものすごく高度な生き物なのでは・・・。ただし、死後時間が経って臭いが消えたカメムシであればアリは食料として巣に持ち帰ります。

卵の状態であれば唯一天敵といっていいのは、チャバネクロタマゴバチなどの寄生蜂です。この寄生蜂はカメムシが産卵した卵に自分の卵を産みつけて寄生させ、さらに孵化した幼虫は他のカメムシの卵を食い荒らして成長します。

カメムシの天敵はカマキリや寄生蜂

↑カメムシの卵に自分の卵を産みつけるチャバネクロタマゴバチ(左)、カマキリもカメムシを食べるときがある(右)

 

カメムシの住処と繁殖

カメムシは暖かい時期はエサを求めて草木の中を動き回っています。特に巣のような、特定の住みかは持っていません。

梅雨ぐらいの時期に交尾をし、植物の葉の裏側などに1度に20~30個の卵を産み付けます。早ければ夏を待たずにこれらの卵は孵化し、カメムシの幼体が生まれます(※カメムシにはイモムシやサナギの時期はありません)。最初は寄生主の植物の汁をすすって集団で生活をしていますが、何度か脱皮を繰り返して成虫になった個体から集団を離脱していき、それから単体行動をとるようになっていきます。

すっかり成長した個体は、迫りくる冬に対して越冬準備に入ります。樹木の隙間や石の下、家屋の隙間などに入ってじっとして寒を凌ぐわけです。そして無事に越冬できた個体はまた餌を求めて動き回り、交尾・出産をしていきます。

カメムシの卵と産卵

↑カメムシと産みつけたばかりの卵(左)と、まるでテントウムシのような孵化したばかりの子供たち(右)

 

人家に侵入してくるカメムシへの対策

細い隙間に潜り込める体格、そして冬場は温度の高くて明るい場所に寄っていくという習性から、カメムシは人家の屋内に頻繁に侵入してきます。特に山間部ではそれが顕著で、時期によってはものすごい数のカメムシが部屋の中に現れるときもあります。

また、色の明るい場所で日向ぼっこをすることも好きで、屋外に干してある白シャツなんかに張り付いていることも多くあります。せっかくキレイに洗った洗濯物がカメムシの刺激臭で台無しにされたときのショックは計り知れません。最悪、気付かずに洗濯物と一緒に取り込んで屋内に持ち込んでしまうことも。

衛生害虫としての代表はと言えばやはりゴキブリですが、もしかしたら山間部ではカメムシのほうが順位が上になるかもしれません。あの侵入頻度と悪臭を放つ習性は、それを経験したことがある者にとってはもう、脅威そのものですもん。

ここからは我々がとれるカメムシへの対策。

 

すみかの根絶
はい、できません(涙)
カメムシは人家の中で繁殖するのではなく、森などの草木の中で繁殖して数を増やします。それらが人家に侵入してくるわけです。元を断とうと思ったら、森を伐採するぐらいのことをしなければなりません。さすがにそれは現実的ではないでしょう。家の周りの不要な植木・雑草をなくすことで多少はカメムシの数を減らせるかもしれませんが、目に見えて大きな効果は得られないでしょう。

 

家屋への侵入を防ぐ
カメムシの絶対数を減らせないのであれば、侵入を防ぐしかありません。もしあまりに頻繁にカメムシが室内に入ってくるのであれば、まずは侵入経路を探しましょう。換気扇、給排気口、エアコン周り、窓のさん、天井裏、床下、考えられる場所は非常にたくさん存在します。カメムシは2mm程度の隙間があれば無理やり体をねじ込んで侵入することができてしまいますので。

網戸の内側にカメムシが侵入してくる

↑田舎ではよくある光景。何故か網戸の内側にいるカメムシ(笑)

 

もしそれらしい侵入経路が見つかったなら、可能な範囲で塞ぎましょう。壁などの隙間であれば、室内用パテやボンドコークで埋めてしまったほうが良いかと思います。そうすればゴキブリやムカデなどのほかの害虫の侵入も防げますし。換気扇は可能であれば網付きのものに取り替えましょう。

しかし窓のさんやドアの隙間はパテで塞ぐわけにはいきません。ここで活躍するのはカメムシ用の忌避スプレーです。一度吹き付けておけば数週間カメムシが寄り付かなくなるので有効活用しましょう。換気扇周りや玄関周り、網戸なんかにも吹きつけておくと効果的です。

 

カメムシいやよー

もし家に寄り付くカメムシの数が尋常じゃなくて困っているのであれば、家の外壁全てに専用薬剤を塗布しましょう。キンチョールのカメムシ専用乳剤というものが市販されています。ただし価格も手間暇もかなりのものなので、あくまでどうしてもというときの最終手段で。

洗濯物にとりついて困っているのならば、吊り下げタイプの忌避剤を。物干し竿に一定間隔でぶら下げておけばカメムシの接近する数を減らすことができます。ただしこのタイプの商品は持続時間が頼りなく、頻繁に取り替えなければいけないために、継続して使用するならばそれなりに費用がかさむことになります。

あと自宅に庭があるのであれば殺虫用の誘導灯を使うのも手です。あの虫が接触すると電撃でバチバチいうやつです。家屋から少し離れたところに設置しておけば、光に強く誘引されるカメムシのほとんどはそちらに向かいます。効果は非常に高く、自宅近辺のカメムシの絶対数を減らせるという点でもかなり優れた対策だといえるでしょう。

ただし毎朝の虫の死骸の掃除が大変ではありますが。当然カメムシ以外の昆虫も集まってくるので、お住まいの環境によってはものすごい数の虫の死骸と毎朝対面することになります(汗)機械の細部にも虫の死骸がつきますので掃除しやすい形状のものを探すとよいでしょう。

殺虫用の誘導灯

 

侵入されてしまったら
侵入されないのが一番ですが、こうなっては仕方ありません、撃退しましょう。ティッシュやほうきなどで捕まえて屋外に出してしまうのが楽ですが、この作戦だとどうしても刺激を与えてしまうので、悪臭に苦しむことになります。あと窓を開けて外に放るときに、ほかのカメムシが入ってきてしまうリスクも。それに逃がしたカメムシも結局はまた屋内に侵入を試みてくるだけでキリがありません。

オススメは次の2つの方法です。

1.ガムテープで捕まえる
カメムシに接近することに抵抗がない人向け。15cmから20cmのガムテープで貼り付けて捕獲し、接着面を内側に折りたたんで密閉してしまいます。悪臭ごと完全に密閉して封印できるので、そのままゴミ箱に捨てることができます。潰して殺すときのあの嫌な感触も味わわなくて住んで一石二鳥です。

ガムテープでカメムシを捕まえる

 

2.カメムシ専用の殺虫スプレーで殺す
一度使ってみるとわかりますが、吹きかけると本当に一瞬で死にます。カメムシに悪臭を放つ隙を与えずに秒殺できるのでお手軽という面ではおすすめです。直接カメムシに触らなくて済む点も、苦手な人にとってはメリットですね。

 

カメムシを食べる国もある・・・

あまりに強烈なニオイに触ることすら抵抗がある人が多いカメムシですが、世界を見渡せば、カメムシを食用にしている国は意外にも少なくありません。東南アジア、メキシコ、南アフリカでは日常的にカメムシが家庭で食べられています。

調理は、熱湯でニオイ成分を除去し、それを干したり、焼いたり、香辛料をまぶして炒めたり。食感的にはパリパリしてラオスあたりでは極めて一般的な食材なんだとか。いくら美味しいと言われても私達日本人にはその感覚は理解できそうにありませんが(汗)

しかし最近、中国でカメムシの過剰摂取で集団食中毒になったという事件が起きました。やはりあまり人体に良い食べ物ではないみたいです(笑)

カメムシの生態と対策

 

 

カメムシが自分の臭いで自爆してしまうのか、実験している動画:

 

カメムシ対策用アイテム

カメムシコロリ

カメムシ用殺虫スプレー カメムシコロリ
カメムシに特化した殺虫スプレー。即効性が強いため、カメムシが臭いニオイを出す前に息の根を止めることが可能。網戸に捕まっているカメムシに吹きかけると面白いぐらいにコロリと死んで落ちます。殺虫成分を使用していないので布団や衣類に対しても安心して吹きかけることができます。

カメムシいやよ

カメムシ いやよ 20g×5個
フックつきでぶらさげるタイプのカメムシ忌避剤です。洗濯物の隣にぶら下げることでカメムシが近寄ってくるのを防ぐことができます。雨にも強く、使用しないときはチャックつきの袋に密閉することで効果の持続時間を伸ばすことができます。通常使用時だとおおよそ2ヶ月程度効果が持続します。

カメムシブロック

カメムシブロック
ミント成分によってカメムシを寄せないようにする忌避剤です。カメムシの侵入経路になりそうな場所に貼って使用します。購入者のレビューを見る限りでは効果があったケースとなかったケースで差が激しく、もしかするとカメムシの種類によって効き目が変わってくるのかもしれません。

ムシムシゲッター

虫虫ゲッター
虫を離れた距離から捕獲することができるマジックハンドです。クモ、ゴキブリ、ガ、ムカデ、カメムシ、毛虫などが対象で、とくに大きな虫を相手にするのを得意にしています。2重構造の毛先で、虫を潰してしまうことなく簡単に捉えることができます。直接虫に触ることが苦手な方におすすめの商品です。

 

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